雨の中パーキングにうずくまっているヒヨコを発見。とりあえずレスキューしました。小さすぎるヒヨコは、母親から育たないと判断されたようです。ちゃんと育つかどうかわからないけど、どうしても放っておく気になれず…
ペンギンという名のヒヨコです
黒いふわふわの毛、お腹とお尻は白、黒い足。ベルベットのボールを2個くっつけたような2頭身。バランス機能が悪いみたいで、床に置くとお尻を床につけて足が上がってしまう。見た目はペンギンの子供みたい。名は体を表すといことで、ペンギンと命名しました。体重は24グラム。羽根の状態から見て、孵化後4~5日という感じ。それにしてはサイズが小さいヒヨコちゃんでした。
まずは体を温めます。タオルの下にカイロを入れて、ペンギンちゃんを乗せます。そして真上からあったかいライトをつけます。ヒヨコの体温は人間よりもずいぶん高めなので、ちょっと暑いかなーぐらいでOKです。問題は立たせても気をぬくとすぐに尻餅状態になってしまうこと。このままだと歩けないし、地面の食べ物をつつくことができないかも。
足を地面につけて鳥らしく座った形にして、柔らかいハンカチでそっと包みます。これでしばらく置いておくとバランス感覚を取り戻す可能性があります。歩くことと食べることができれば、母鳥の元に還してあげられるかもしれない…
30分くらい経つと、体も乾いてだんだん元気になってきたので、栄養補給のために動物病院で購入した餌を与えてみました。スズメやツバメ、文鳥みたいに親鳥が食べ物を与えるタイプではないので、口を開けてくれません。自分でつつく気配もなので、練り餌くらいの硬さの餌を小さな注射器のようなもので嘴の横から少しずつ塗りつけるようにします。ほぼ無理矢理ですが少しずつ飲み込んでくれました。
迷子になるヒヨコ達
春から夏にかけて生まれるヒヨコはとってもたくさん。5月から7月ごろはあっちでピヨピヨこっちでピヨピヨ、まるでヒヨコ祭りです。そして迷子が多発します。
母鳥の周りをちょこちょこ走り回るヒヨコ達。母鳥は特別な鳴き声でヒヨコに食べ物のありかを教えたり危険を知らせたり、号令をかけて移動したりします。ヒヨコ達も声を出しながら母鳥に従って行動します。ゲームのピクミンそっくり。そして母鳥との距離が遠くなると、大声で泣き叫びます。母鳥がその声に気づくと、「こっちよー」という感じでまた特別な鳴き方でヒヨコを呼び寄せます。
それでもはぐれてしまう理由はいろいろ。
- 何かに夢中になって気づいたら母も兄弟も見えなくなっている。
- 段差や人間、車などの障害物で進めなくなってしまう。
- 生まれつき障害やけがなどでついて行けなくなってしまう。
- 兄弟との成長の差が大きくてついて行けなくなってしまう。
1と2の場合は、母鳥の元へ戻れるよう手伝ってあげれば大丈夫な場合が多いです。けれど、3と4の場合はちょっと難しいこともあります。
育たない子は育児放棄される
ニワトリはたくさんのヒヨコを育てます。10羽以上連れているお母さんもいます。たくさんの卵は同時に孵化するわけではないので、最初に孵化した子と最後に孵化した子では体のサイズや身体能力にかなり差があります。基本的に野良ニワトリなので、食料や安全が確保されているわけではありません。母親はヒヨコ達が少しでも安全にたくさん食べられるよう、他の雌鶏と戦います。雄鶏も引くような激しい戦いです。そして1羽でも多くのヒヨコを健康に育てるために、育たないと見切った子は追い払うのです。
実際に、何度か迷子のヒヨコを保護して、必要ならば栄養補給などして母鳥に返したのですが、ちゃんと育っている子がアクシデントではぐれた場合は、すんなり家族の元に戻ります。でも感動的な再会を目にし、めでたく母鳥に連れ帰ってもらえたヒヨコが、数日後やっぱり姿を消してしまった…ということもありました。また、明らかに小さい子や、片目が開かない子など、受取拒否をされたこともありました。
その雌鶏がヒヨコの親なのかどうかは鳴き方でわかります。母鳥は、なんとも言えない優しい声で「コッ、コッ、」と話しかけるんです。よその子ならいくらヒヨコが鳴いて駆け寄っても無視。まとわりつかれるとつつきます。そして、見切って追い出したヒヨコにはもっと厳しい。まずはあの優しい声で近づいてから、あからさまに威嚇します。本気でつつき殺そうとします。ヒヨコを母鳥に返す時はこのような非常時に備えてとても緊張します。
ちなみに、育児放棄された子は本当に育たない場合が多いです。育たない理由は、先天的な理由が多いようです。足の問題、嘴の変形、消化機能の問題など、母鳥にはわかるんですね。兄弟との食べる競争に負けて栄養不足だった場合などは、手をかければちゃんと育つこともあります。
ペンちゃんはうちの子に
保護する数日前、ペンちゃんが母鳥や兄弟と一緒にいるところを何度か見かけていました。なので、保護してから数時間後、ちゃんと歩けるようになったので母のところに連れて行きました。ペンちゃんの母は黒っぽいグレーの大柄な雌鶏です。羽根も綺麗で健康的で、喧嘩も強い。近くで見るとペンちゃんは他のヒヨコよりも少し小さい感じでした。最初から卵のサイズが小さかったのかもしれません。
兄弟達は駆け寄ってきたのですが、すぐに母鳥がそれを制しました。少し首を傾げてペンちゃんを見つめ、母の声を出したのですが、羽根を膨らませて突進してきました。
やばい!
大慌てでペンちゃんをキャッチしましたが、母鳥は戦闘モードです。怒ったニワトリは手に負えませんので、さっさと退散することに。ペンちゃんごめんね。
というわけで、ペンちゃんはとりあえずうちの子になることになりました。